MLC は、SSD の記憶媒体であるフラッシュ・メモリの 1 つのメモリ・セルに 2 ビット以上(多ビット)のデータを記録する方式を意味します。MLC は、DLC(double-level cell)と呼ばれることもあります。1 つのメモリ・セルに 1 ビットのデータを記録する方式は、SLC(single-level cell)と呼ばれます。
現在普及している呼称として、2 ビットを記録できるセルは MLC、3 ビットのものは TLC(triple-level cell)、4 ビットのものは QLC(quad-level cell)と呼ばれます。
MLC 型 SSD の長所
MLC フラッシュ・メモリはデータ密度が高いため、ストレージ容量あたりのコストが低いことが大きな長所といえます。MLC 型 SSD フラッシュ・メモリは SLC よりも低価格であるため、コンシューマ向け電子機器メーカーに広く採用されているソリッド・ステート・ストレージ・メモリです。
MLC 型 SSD の短所
通常では、「レベル」の数が増える、すなわち、1 つのセルに記録するビット数が増えると、性能(スピード、信頼性)が低下します。理由は、多くのデータを読み取るために高い処理能力が必要であること、読み取るデータのビット数が多いほど誤差の許容範囲が小さくなり、それに対応する高精度が求められることにあります。したがって、通常では、MLC は SLC よりもビットエラー・レートが高くなります。
この他に、SLC 型 SSD と比較した場合の短所として、書き込み速度が低いこと、耐久性に関わる P/E サイクル数が小さいこと、消費電力が大きいことが挙げられます。また、MLC 型 NAND は、信頼性を高めるために同じデータを第 2 しきい値電荷で読み取る必要があり、読み取り速度が SLC より低くなります。
MLC 型 SSD の仕組み
各メモリ・セルには、マイクロチップのチャージ・トラップの電荷の有無に応じた一定数の「状態」があります。各状態は、トラップの電荷レベルに応じて 1 と 0 で表されます。SLC は、2 つの電荷状態(0 と 1 の 2 値)で、1 つのセルに 1 ビットのデータを記録します。
MLC 型 SSD は、4 つの電荷状態(00、01、10、11 の 4 値)で、1 つのセルに 2 ビットを記録できます。TLC(triple-level cell)では、チャージ・トラップに 8 つの電荷レベルがあり、8 つの異なるしきい値電荷(8 値)が表せるため、3 ビットを記録できます。16 の電荷状態(16 値)で 4 ビット記録できるものは QLC(quad-level cell)、32 値で 5 ビット記録できるものは PLC(penta-level cell)と呼ばれます。
MLC 型 SSD の信頼性
MLC は SLC よりも高頻度で NAND フラッシュへのデータの書き込みが行われるため、エラーが発生するリスクが高く、その結果、MLC 型 SSD は一般的に SLC 型 SSD よりも信頼性が低いと考えられています。しかし、必ずしもそうではありません。トロント大学と Google が 6 年間にわたって実施した調査によると、MLC のほうが書き込みの耐久性がはるかに低いにもかかわらず、SLC 型 SSD と MLC 型 SSD では、エラー発生率がほぼ同じであることがわかりました。
この調査では、次の事柄も明らかになりました。
- SSD のエラーの最大要因は、書き込み回数ではなく、使用年数である。
- 訂正不能ビットエラー・レート(UBER)は、信頼性を測る指標としては機能せず、訂正前のビットエラー・レート(RBER)のほうが有効である。
- 使用開始後 4 年間で、SSD の 30%~80% に少なくとも 1 つの不良ブロックが生じ、2%~7% に少なくとも 1 つの不良チップが発生する。このことは、SSD は HDD のように一度に全データを失うリスクは低いが、SSD もデータの一部を失うリスクがあることを意味しています。
MLC 型 SSD にはどのような製品があるか
この質問は、SSD の調達時によく挙げられます。1 つのセルに 2 ビットを記録する SSD という意味の MLC 型 SSD の主要な製品は次のとおりです。
MLC 型 SSD の例:
結論:MLC 型 SSD で、容量と信頼性を両立
従来は、1 つのセルに記録するビット数が増えると、信頼性と容量のトレードオフが生じるとされてきました。1 つのセルに 2 ビットのデータを記録する MLC 型 SSD は、現在市場にある SLC セルと TLC セルの中間の容量と信頼性を備えています。技術の進化に伴い、MLC と SLC の信頼性の差は大幅に縮小し、セルの使用年数がより大きな意味を持つようになりました。したがって、ストレージを購入する際には、データ・ストレージ・ソリューションの性能、信頼性、容量を包括的に理解したうえで意思決定をすることが重要です。